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  • 執筆者の写真Mana LAURENT

雨の日の小さな旅

雨音と共に目覚めると少しほっとしませんか。

朝、少しずつ意識が明瞭になるに連れて聴覚が雨の音を捉えると、今日はやみくもに快活に過ごさずともよろしい、と許しを得たようで妙に伸び伸びとした心持ちになります。

写真のレディースマントルはもう随分以前に、六月のスイスの草原で撮影したものです。その昔、このレディースマントルの葉に宿った露は錬金術や婦人病の薬に用いられたとか。


朝露の湿り気を帯びた春の草原で、足下に銀色に光る水滴を湛えた葉の姿を見留めると、何か特別な贈り物を得たように心が踊ります。

雨の日は静かな心で、小さきものを観察するのに向いています。鳥の歌は今日はお休み、絶え間ない線を描く雨音が世俗の音を遮断します。青い景色の中に、真珠色の薄い貝殻を背負った小さなカタツムリが、みずみずしい柔らかい葉を喰みながらゆっくり進む音。それだけを聴くことが出来るように。

スイスの山の草原に初めて降り立った時、大気には馥郁たる香りが立ち込めていました。柔らかな花の香り、新しく芽吹いた針葉樹、下生えのミントの群生、彼方からは放牧された牛の群れが揺らすカウベルの音が、オーケストラのチューニングのように風を伝い聴こえて来ます。


旅の途中、ある女性の家を訪ねた際、彼女はヤグルマギクの青い花びらを一輪摘み取ると、お茶やサラダにも使えるのよ、と教えてくれました。この時、六月の草原に漂うたおやかな香りを、この花が放っていた事を知ったのでした。


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