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執筆者の写真Mana LAURENT

『暮しの手帖』5世紀21号

「料理・写真 ローラン麻奈」という奇妙なクレジットは誤植にあらず。本日より発売の『暮しの手帖』5世紀21号、「おじいちゃんのお菓子と型」中で、私は三つのお菓子を作りました。



これは文筆をする友人渡辺尚子氏から、ある人の製菓道具を譲り受けた事により始まります。


昭和の時代、洋菓子を手作りするご家庭の台所には、何度もページを捲り、読み込まれた宮川敏子先生のご著書を見つける事があったでしょう。


スイスとフランスで製菓を学ばれた宮川先生はその後、家庭で作る洋菓子のレシピを数多く残され、その洗練された技法と、家庭の製菓の為に考え抜かれた合理的な製法、それにより生み出される緻密で上品な味わいは、現在も相原一吉先生が受け継がれています。相原一吉先生。私のお菓子の先生です。


近ごろ友人渡辺尚子氏が、その大学時代の後輩小林由加さんから譲り受けた製菓道具と言うのは、由加さんのお祖父様が遺された物でしたが、様々な抜き型や口金ばかりでは無く、バルケットと言う舟型の小さなタルト型や、ボンボンショコラ用のチョコレートフォークに至るまで、相当にフランス菓子を作り込んでいた方であった事が一目で見て取れました。


聞けば、生前のお祖父様は大変な趣味人で、遺品の中には製菓のみならず、本格的なカクテルの道具も混じっていました。情報が飽和している現代とは事情が違いますから、この時代に西洋菓子の技法を独学で得る事は困難です。お祖父様はどなたにフランス菓子を習っていらしたんですか。ご家族によると、当時の朝日カルチャーセンターに関わりがあるのではないかと言う事です。


帰り道、予感がした私は帰宅まで待ちきれず、自宅までほんの数分と言う場所で車を停めると、貰ったばかりの色々な菓子作りの道具を眺めながら、相原先生に電話をかけました。縁あって、三好正人さんと言う方のお菓子の道具を頂いたんですが、もしや先生ご存知ではありませんか。


ちょっと待ってね。先生はそう仰るとものの数分で電話口に戻って来られるなり、ありましたよ、三好正人さん、宮川の古い名簿にお名前が残っています。と仰います。


つまりこの時、明治生まれのこの三好正人さんという人が、言うなれば私の先輩であった事を知り、私は知らずに、先輩の道具を譲り受けたと言う訳でした。















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