『スパイスキャンプ』薫る至福のスパイス料理 伊藤一城著 文化出版局より発売中
午前4時。秋口に差しかかり遅い夜明け前の五光牧場オートキャンプ場には、早起きの鳥達のさえずりが響き始めます。撮影初日の前日は雨。土砂降りの中決行した撮影の為にドロドロになった撮影機材達を夜中まで手入れし、そのまま寝床に突っ伏してハッと気づくと、いまいましいアラームの音。ギシギシ軋む身体で何とか這い出し、編集の浅井さんが淹れて下さった温かい紅茶と、チョコレートとナッツで息を吹き返します。朝から遭難気分…。
私的な写真を撮る事と、仕事に於いての撮影。後者は、他者の依頼によるミッションです。つまり、オブラートをバリッと破れば、そこには他人のお金という報酬が厳然と存在している。限られた時間と様々な制約と、予算の中で、必要な写真を「狙って」撮りにいかなければならない。これは中々なプレッシャーであります。キャンプ場をうろついている変な顔の猫を追いかけまわしている時の伸び伸びとした気楽さは、そこには無いのです。
様々な撮影の旅に赴いて来ましたが、いつも気持ちは複雑です。楽しみと重圧、ああすごい、こんな所があるのか、こんなものがあったのか、こんな人がいたのか、撮れるんだろうか、撮れているんだろうか、これで。
この朝一番の私のミッションは、早朝の林間で、朝のコーヒーを愉しむ伊藤さんの姿をおさめる事でした。まだしっとりと夜露を纏ったままのランドクルーザーに乗り込み、四輪駆動で出発です。前日の夜、解散前に約束した撮影ポイントに到着すると、まだ薄暗い森の木々の間にはすでに何人かの先客の姿が。今や遅しと撮影班の到着を待ち構えている。彼らこそ、伊藤さんの盟友であり、この本の土台となる「キャンプ」の舞台を作り上げた仕掛け人、LOGのメンバーです。
『スパイスキャンプ』撮影後記その三へつづく…
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